キャズム(Crossing the Chasm)
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キャズム(Crossing the Chasm)

キャズム(Crossing the Chasm)
キャズムCrossing the Chasm)は、ハイテクノロジー分野の製品やサービスのマーケティングでは、お馴染みの理論だと思うが、ご存じないかたは、この記事と、できれば「キャズム(ジェフリー・ムーア(Geoffrey Moore)著)」の本をご一読頂きたいと思う。

当方が「キャズム」理論を初めて聞いたのは、マーケティング課程を一通り終えたあと、米国・西海岸のハイテク企業でプロダクト・マネージャとしての仕事を得てしばらく経ってからのことだった。

当時、当方の所属した事業部門では、電子機器などの設計・開発に使用するソフトウェア製品を開発、販売しており、おりしも新しい製品ラインを立上げてマーケティングを掛けている最中で、そのマーケティング施策の中であるマネージャが資料やプレゼンの中で "Crossing the Chasm"(キャズム) を引き合いに出し、色々とプランやらアイデアを述べていたのである。

その後、何らかのきっかけでキャズム本のペーパーバック(英語)を手に入れることができたので、もっけの幸いとばかりに読みふけり、キャズム理論についての一通りの考え方を理解したのだ。

ここでは、その要点だけをかいつまんで簡単に記しておく。

まず、英語の chasm とは、割れ目、谷などと言った意味の言葉だ。キャズム理論では、とくに単なる谷ではなく「死の谷」なんてちょっと物騒な表現を使ったりする。

では、ハイテク製品と死の谷がどう関係するのか。 
これを理解するためには、まず技術導入ライフサイクル(Technology Adoption Life Cycle)という概念を知っていなければならない。

技術導入ライフサイクルというのは、製品ライフサイクルに類似した正規分布曲線を考えたときに、ある新しい製品を市場に投入したとき、いくつかの異なった顧客層が存在し、それらが異なったタイミングでその技術・製品を導入や採用(平たく言えば購入)するというものだ。

具体的には、その異なった顧客層は次の5つに分かれるとされる:

  1. イノベーター(Innovators)
  2. 新しい物好き/アーリー・アダプター(Early Adopter)
  3. 初期の多数派/アーリー・マジョリティ(Early Majority)
  4. 後期の多数派/レイト・マジョリティ(Late Majority)
  5. 技術オンチ/技術嫌い(Laggards)

訳語については、キャズム本の言葉とは違うかも知れないが、意味は伝わると思うのでご了承頂きたい。

さて、上の5種類の顧客層で、新しいハイテク製品に一番早く飛びつくのが、イノベーターと言う人達。

この人達は、技術に詳しく、その新製品が売れようが売れまいが、技術的に面白いものであれば、手に入れなければ気がすまない、という性分の人達だ。 日本語で言えば、差し詰め「技術オタク」、「ハイテクオタク」と言われる人達がこのカテゴリに入る。 市場全体の数からすれば、ごく少数だが、技術的なお墨付きをこの人達からもらうことは新しいハイテク製品にとって重要だ。


次いで、新しい物好き(Early Adopters)は、イノベータほど早く新製品には飛びつかないし、技術的な興味はそれほどではない。ただし、その名の通り、新しい物が出てきたら、普通の人よりも早く使ってさりげなく自慢したい、そんな人達だ。 人の意見よりも自分の考えやビジョン、イマジネーションで買うかどうかを判断する。

このカテゴリの人達も、ハイテク製品が市場に投入されて、受け入れられる課程で非常に重要な役割を果たす。なぜなら、このカテゴリの人達の意見や論評には影響力があり、さらに多数の顧客がこの人達の意見を参考にすることになるからだ。

そして、この後、初期と後期の多数派の人達がそのハイテク製品を順次手に入れるが、これらのカテゴリの人達の共通点は、実用的に使えるかどうかと言うこと。

例えば、最近まで次世代DVD(ブルーレイ等)レコーダーの規格が二つに分裂していたが、今年の初めに東芝がHD DVDの撤退を発表してから、ブルーレイがデファクト標準になるという経緯があった。 いわば、初期と後期の多数派の人達は、次世代DVD戦争中にリスクを冒していずれかのレコーダーを買ったりは決してしない人達だ。 (なぜなら、この人達は規格争いに敗れた製品を買ってしまうというリスクは冒したくないから。)

技術オンチ、技術嫌いの人達は、何がおきようともハイテク製品は買わない、興味が無い、という人達だ。
あまり数は多くないが、例えば今でも DVD プレーヤーが自宅に無い、そんな人達がこのカテゴリに相当する。

さて、少し長くなったが、実は、この技術導入ライフサイクルでは、新しい物好き(Early Adopters)と初期多数派(Early Majority)の間に深い谷が存在する。 これがキャズムである。

なぜ、こんな理論が成り立つのか、と言えば、それは他の製品や代替技術との競争であったり、あるいは製品や技術に実用性や機能が欠けていたり、あるいはマーケティング戦略や施策がまずかったり、と色々と理由は考えられるだろうが、とにかく実用的でなければ絶対に買わない多数派の人達に受け入れられなければ、新しいハイテク製品は決して市場で普及し成功することができない、(そしていずれは市場から消えていく・・・)ということだ。

既に引き合いに出した次世代DVD技術で言えば、HD DVD はキャズムを超えられないことが明らかになったために東芝は撤退を決めた、Blu-ray はひとまずはキャズムを超えつつあるかな、という感じだろう。

Blu-ray が今後キャズムを乗り越えて成功するためには、ビデオ・オン・デマンドの技術やサービスとの競争に打ち勝つか、あるいは競争を回避して市場で十分な利益を生みつつ普及するだけの数量が出荷されるようになるか、いずれかのシナリオが成立しなければならないワケだ。

(ソニーとパナソニックという家電メーカーの二強が先陣を切って推し進めていることもあり、その後の経緯を見る限り、ほぼ普及の途上にあると思われるが・・・)


と、ここまで簡単にキャズム理論の骨子、要点だけを記してみた。

キャズム本には、さらにどのようにすればハイテクの新製品がキャズム(死の谷)に陥らないようなマーケティング戦略を打ち出せるか、インターネットとハイテク製品、キャズムとの関係は、などテクニカル・マーケティングに従事する方なら必須の内容が盛り込まれている。

仕事に関係があって必要性を感じつつも、まだ「キャズム」を読んでいない貴兄/貴女は、是非一読しておくことを強くお奨めしておきたい。


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