ARM支配の組込み市場、インテル ATOMで攻略なるか
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ARM支配の組込み市場、インテル ATOMで攻略なるか

パソコンの事情に詳しい方なら、インテルのATOMという新しいブランドのマイクロプロセッサの名前は良くご存知だと思う。 

そう、日本など先進国では成熟化したため買い替え需要がメインで成長性が低いパソコンの市場で売れに売れている激安ミニノートパソコンの CPU としてインテルがパソコンメーカー各社に供給している小型で低消費電力のチップだ。

このような話題だけだと、このATOMプロセッサもインテル社が開発、製造しているパソコン用x86プロセッサの一つとしか思われないかもしれない。 
しかし、本来インテル社はこのチップをミニノートPCを含めた組込み機器市場一般に対して投入しているのだ。

そして、この2週間ほど前に報じられたのが、組込み機器向けプロセッサの市場で圧倒的な市場シェアを持つ英国のプロセッサ・コアIPベンダであるARM社のプロセッサ・ファミリで、アドビ社のFlashとAIRなどのネット向けメディア・プラットフォームが最適化される、要するにARMがネット向けの組込み機器でのアプリケーション対応を強化したと言う話だ。

この二つの事実の関連性はあまり大きく報道されていないようだが、実は水面下ではこの両社の間でなかなか激しいマーケティング攻防が始まったのではないかと当方は見ている。

ちなみに、組込みシステムの業界の方なら良くご存知だと思うが、ARM社自身はプロセッサの半導体を直接製造はしていない。

IP(Intellectual Property)と書いたが、ARM7, ARM9, ARM11など各シリーズのRISC型プロセッサコアを、日本や欧米の半導体メーカーやファブレス・メーカーなどにライセンスし供与し、その対価を得るというのがARM社のビジネスモデルだ。

ARM社が組込み機器のマーケットで大きな存在感を持つようになったそもそものきっかけは、米Texas Instruments (TI)社が携帯電話向けのデジタル信号処理プロセッサ(DSP)の制御用プロセッサコアとして採用したことだった。

それ以来、TI社のDSPがノキアなど有力な携帯電話メーカーに標準デバイスとして大量に採用されたため、携帯電話市場の急速な成長とともにARM社のライセンス事業も飛躍的に成長した。 

そして、やがて携帯電話だけではなく、無線ルータなどインターネット向けのネットワーク機器や携帯型ゲーム機(任天堂のDSやソニーPSPもARMコア搭載のチップを採用)、ハンディGPSターミナル、プリンタ他のコンピュータ用周辺機器、などありとあらゆる組込み機器でARMコアの搭載された各社のプロセッサが使用されるようになったのである。 

パソコンと違って、派手なテレビコマーシャルなど一切やっていないためARM社は一般的にはほとんど知られていない。しかし、組込み機器市場のインテルと言っても良いくらい、多様な機器でARMアーキテクチャの半導体が使われているのが実際のところ。

その組込み機器市場に、パソコン向けプロセッサの巨人ではあったが、組込み向け事業では StrongARMやXScaleなどARMベースのプロセッサを出しつつもこれまで大きな成功を収めることが出来なかったインテルが、満を持して投入した戦略製品がATOMファミリのプロセッサなんである。

当然、インテルとしては、ARMアーキテクチャ・ベースのプロセッサの市場シェアを切り崩してでもx86ベースのATOMプロセッサを販売拡大していきたいはず。

そんなインテルの動きに対するけん制の対応とも取れるのが、上述のARM社によるアドビ社との提携関係だ。

ARM社としては、自分がこれまで長年かけて築いてきた組込み向けプロセッサの縄張りを、よそ者(インテル)に食い荒らされるのは極力避けたい。 

しかし、激安ミニノート・パソコンという、パソコンと携帯情報端末の中間的な、いわばブルーオーシャン製品向けでインテルが急速に存在感を示し始めたために、しかるべき迎撃体制を整え始めたと言うように見える。

ここで、ARM社のプロセッサコアを搭載したチップ(フリースケール社製i.MX37)とインテルATOMの主要なスペックを比較してみよう:

プロセッサ 製造ルール[nm] クロックFmax [GHz] 消費電力[W]
ARM11(i.MX37) 90 0.53 0.13
ATOM N270 45 1.80 0.6〜2.5

スペックのデータとしてはごく一部であるし、動作周波数もかなり異なっているため、必ずしも同一条件での比較ではないことをお断りしておく。 とは言うものの、ATOMもさすがにインテルが自信を持つだけあって性能の割りに消費電力が低く、省電力性で定評のあるARMプロセッサともかなり良い勝負と思われる。

インテル社の強みは、パソコン向けプロセッサ市場での独占的な市場支配力とそれによって獲得したx86アーキテクチャで稼動するソフトウェア資産、そして開発者コミュニティだ。 その開発者コミュニティも、企業で給料を得て仕事をするソフトウェア技術者もいれば、GNUやLinuxなどオープンソース・ソフトウェアの世界で自由闊達に活躍するハッカーなどもいたりして、非常に層が厚い。

デファクト標準であることから、組込み機器向けソフトウェア分野ではARMプロセッサに親しみ深いソフトウェア技術者は大変多い。 が、組込み機器ではパソコンほどオープンソース・ソフトウェアによる開発が一般的ではないというところが、意外とARM陣営のアキレス腱になったりするかもしれない。

インテルとしては、StrongARM、XScaleと二世代 ARMアーキテクチャで成しえなかった組込み市場での事業確立を悲願として、3度目の正直じゃないが、かなりなりふり構わずに勝負に出てARMやMIPSなどのシェアを十八番のx86アーキテクチャで奪い取りに来る可能性が高いと見ている。

1年後、3年後の組込み向けプロセッサ市場の勢力図で、インテルの存在感がどの程度増し、ARMやMIPS、IBMのPowerPC (Cell/B.E.含む)などのアーキテクチャがどの位の市場シェアを維持しているのか、大いに興味深いところだ。

参照記事: AdobeとARMが提携,ARMプロセサ向けにFlashとAIRを最適化へ


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