自前主義(NIH)症候群に嵌って抜け出せないメーカー
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自前主義(NIH)症候群に嵌って抜け出せないメーカー

最近、ある新製品のマーケティング支援にあまり意図しないものの関わることになった。

正直言って、その新製品が市場で成功するとは思えないし、自分の周囲でもそう思っている人は誰もいないようなのだが、クライアントに受けた仕事である以上、やらざるを得ないというワケだ。

で、その新製品自体についての詳しいことは書くことは出来かねるので差し控えるが、それも含めて国内の電機メーカーなどを見ていて思うことがある。

それは、モノが売れなくなった今日この頃でもいまだに自前主義(別名、NIH[=Not-Invented Here ノット・インベンティッド・ヒア]症候群)や自己(自社)の満足にこだわり、そのために製品企画の段階(インバウンド・マーケティング)で顧客ニーズを反映した製品(マーケティング4PのProduct)を作れない会社が後を絶たないということだ。

製品の性能などを考えて、この規格を採用する、というような事情もあるのだろうが、それも本当に顧客(クライアントまたはカスタマー)が欲するものかどうかを真剣に考えた製品か、というと疑わしい仕様の製品ができあがってしまう。

結果的に、その製品を売れと製品開発部門から押し付けられたマーケティング部門や営業担当者は、とにかく頑張って販売促進や営業活動にいそしんでみるが、元々製品が顧客ニーズを満たしていなかったり、魅力に乏しかったりするために、売れ行きが悪い。

挙句の果てには、開発部門は「営業の売り方が悪いんだ!」と言うし、マーケティングや営業部門は「こんな売れないものを作る開発部門が悪い!」ってな感じで責任のなすりあいに発展したり・・・

この原因には、やはり自前主義から決別できない技術者根性と、営業とマーケティングの区別が不明確であるという組織論的な問題の二つがあるのではと感じる。

自前主義(NIH症候群)から決別できない技術者根性

自前主義、NIH(Not-Invented-Here)症候群は、その名のとおり、自社で開発しない技術や製品は、採用せず、売らず、というような古い考え方だ。

国際的な(あるいは市場縮小や成熟化により業界内での)競争が激化した現在では、ビジネスの成功要因の一つにスピードがある。

もちろん業界によって、そのスピードへの要求は色々と異なるが、いずれにしても製造業では日本メーカーが得意とした「すり合わせ」式開発が全盛を極めた時代から、業界標準となった技術規格に基づいたパーツやサブシステムを組み合わせる、いわゆる「モジュラー式」開発への移行がどの製品カテゴリでも起きつつある。

例えば、パソコンはそういったモジュラー式開発が非常に進んだ分野で、「ウィンテル」(マイクロソフトのOSウィンドウズとインテルのCPUの組合せ)を中心に、周辺機器との接続方式や形状などの規格がすべて国際的に統一され、その規格に基づいたハードウェア、ソフトウエアを組み合わせることによって、パソコンの完成品ができあがる。

そうなると、製品の差別化を製品の機能や性能で行うことは、そのキー・コンポーネントであるCPUやGPU、あるいは製品全体の機能をつかさどる基本ソフト(OS)を開発・提供する企業だけの特権となり、それ以外の川下の製品メーカーは、経営スピードや、高度化・多様化サービス、低コスト化、などで競合との差異化を図り、優位性を打ち出すことになる。

こういう状況では、以前と違ってすべての技術や部品を自社で時間をかけて開発して製品を開発することにはメリットではなく、製品市場投入の遅れという大きなリスクが伴うことになる。

これを理解していないメーカーは、自社の製品や付帯サービスをすべて自前で提供しようとするため、結果的に顧客視点でみたときに、ニーズに合致しなかったり、中途半端な機能・性能しか提供できなかったりするために、せっかく開発した製品が売れず、困ってしまうことになるワケだ。

なお、最近は携帯電話などもApple iPhone や Google Android などのオープンな統一規格が出現したことで、一気に業界の再編が進む可能性が強まってきたことを指摘しておきたい。

さらに、すり合わせがまだ大半の自動車産業でも、環境問題への対応からハイブリッド化を経て電気自動車への移行が始まりつつあり、そこではやはりモジュラー化による低コスト化と国際水平分業の波に乗り遅れたメーカーは、淘汰される運命にあると見ている。

もう一つ、ついでに書くとするなら、重要な製品機能の大半がソフトによって実装・実現される現在、ソフトウェアとソフトウェア技術者を軽視する企業に未来は無いということ。 

分野は違うと思うかもしれないが、検索エンジンの覇者グーグルには非常に優秀なソフトウェア技術者が数多く在籍していることと、Googleが創業からわずか10年ほどで株式公開しIT分野全般に大きな影響力を持つにいたったことは、決して偶然では無い。

ちなみに、二年ほど前までいた会社で同僚に聞いた話だが、あるメーカーでは、機構や意匠の設計者の身分が一番偉く、電子系などのハード設計者がその次で、ソフトウェア開発部門は奴隷か何かみたいに一番身分(というか立場)が低い、みたいなワケの分らない技術者間差別があったらしい。 

今ではそんな意味の無いナンセンスな差別が無くなっていることを願うばかりだ。


営業とマーケティングの区別が無い組織

当方は、現在はいろいろな事情から純粋に日本の会社に勤めているが、実は理工系の大学を出て以降、数年前に日本のある大手メーカー系の小さな研究開発型ベンチャーに転職するまで、ずっと外資系あるいは外国の企業そのものにしか勤めたことがなかった。

そのキャリアでの後半、米国のメーカーでは製品マーケティング(product marketing)に数年間ほど従事していたことがある。
 日本の大きなメーカーなどで直接マーケティング絡みの仕事をしたことが無いので、半分は推測となってしまうことはお断りしておくが、日本の会社(特にメーカー)ではやはり営業とマーケティングの区別が曖昧な場合が多いように感じる。

また、日本の企業という組織によくありがちな、責任の所在の不明瞭さともあいまって、製品を開発する際に、きちんとしたインバウンド・マーケティング、つまり売れる確率が高い製品の企画やリサーチが行われているのか、かなり大きな疑問を感じることが多いのだ。

このため、上述のNIH症候群(自前主義)とも相まって、成功する確率の低い製品を作ってしまう。
とりあえず、売ってはみるものの、尻すぼみになって、やがてはその市場セグメントや製品カテゴリから撤退・・・ということが多いように思う。


不況の今こそ、マーケティング重視への転換を

結論としては、端的には上述で指摘したことの反対となるだけだが、とにかく自前主義、NIH症候群を捨て、マーケティングを重視した組織や経営に企業を再構築することでしか、現在のような厳しい経済状況で生き残ることは難しいということだ。

(念のため、再構築→リストラクチャリングと言うと、日本ではレイオフとほぼ同義になってしまっているが、本来の意味は、もちろん人員の解雇も含めつつもマネジメントで組織や事業構造、戦略を最適化するというような意味合いだった。)

例えば、インターネットに対応した電子機器の場合、写真コンテンツとの連携であれば、NIHだからと自社で一から立ち上げるのではなく、まず Fickr やGoogle Picasa、あるいはフォト蔵やはてなフォトのAPI活用を、動画コンテンツとの連携であれば、同様に何よりも YouTubeやニコニコ動画との連携を考えるべきだろう。

マーケティング重視の組織にするためには、精神論を振り回して効率の悪い飛び込み営業を営業マンに強制したりするような営業慣行での非合理性を改め、マーケティング4Pを開発部門や営業部門で共同で考えながら新しい製品やサービスを開発することだろう。

また、小規模な企業では人員や人権費の制約からありがちだと思うのだが、可能な限り営業担当者(部門)とマーケティング担当者(部門)との間で、明確に職責や権限を区別すべきだろう。 マーケティングは引き合い情報の獲得、営業はクロージングと分業する方が責任範囲が明確になるし、評価もしやすいはずだ。

(ただし、マーケティングの方が定量的な業績評価は難しいかもしれないので、そこは良く検討と確認を行ったうえで、組織や配置を変更する必要があることには十分留意されたい。)


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