ガラパゴス化する日本の製造業
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ガラパゴス化する日本の製造業

ガラパゴス化する日本の製造業 - 産業構造を破壊するアジア企業の脅威ガラパゴス化する日本の製造業

ガラパゴス化」という言葉を、最近仕事の周辺のあちこちで見聞きするようになった。
でも、「ガラパゴス化」の意味する所、現状を正確かつ詳細に理解している方がどれだけいるだろうか。

野村證券 産業戦略調査室で主任研究員をされている野村智彦氏が書いたこの本は、そういったガラパゴス化についてデータと論理的な分析、製造業で現在起きている事実に基づいて理解を深めるうえでお奨めだ。

実際、当方も大学を卒業後に就職したメーカーでの半導体設計から始めて長らく電子産業に関わってきて、日本の電機メーカーがDRAM市場で韓国のサムスンらに敗れて次々と撤退するのを業界の一人として垣間見てきた。
(といっても、当方はメモリーではなく、論理回路主体のDSPやASICなどのロジック製品という分野だったので、直接DRAMに関わったわけではないのだが)

パソコン市場でも独自アーキテクチャや自前主義に拘り、内弁慶で海外への進出ができなかったために、国内市場で細々と国際水準からみると高機能ながら高価格なパソコンを売るのが中心となり、台湾勢や米国勢にはまったく太刀打ちできていない。

当方として目から鱗だったのは、半導体業界に長くいながら TSMC の現状認識が足らず、軽視していたことだ。
ガラパゴス化する日本の製造業」を読むまでは半導体ファウンダリ1位のTSMCと2位のUMCの差はそれほどないのだろうと勝手に思い込んでいたのだが、実際にはダントツでTSMCがシリコン・ファウンダリの王者だったのである。

そういった事情も、統計データと客観的な分析とともにすべて赤裸々かつ冷徹に記述されている。
国内の電機メーカーや半導体メーカーで、韓国勢や台湾勢に苦汁を飲まされた方々には非常に耳の痛い話だろう。

一方、日本企業でもアジアの新興勢力との戦いでまだ良い勝負の企業群があるいう分析は、不幸中の幸いというか、救いであり、今後もシャープの液晶パネル、パナソニックのプラズマテレビ、エルピーダメモリのDRAM、東芝のフラッシュメモリなどには今後も是非頑張って欲しいものである。


ガラパゴス化から脱却する為の処方箋

では、具体的にガラパゴス化から逃れて成功するためにはどうすれば良いか、ということを書いてあるのが、本書では第7章の「世界で勝ち抜くためのビジネスモデル − 10年後の覇者の条件とは」の部分。

具体的には、すり合わせ技術が生かせる分野、機械的、アナログ的な部品が必要な分野、命に関わり事故が絶対に許されない分野などで、アジア勢(+アメリカ企業の連合)との直接の競合を避け、独自技術を生かしながら市場成長が見込め、差別化が可能な事業を行うということになる。 
例えば、自動車、精密機械、工作機械、環境関連分野などがそれに当る。

この辺の分野であれば、まだまだ"ガラパゴス"日本の企業も有利に戦えるということで、これも良いニュースではある。


自動車産業に迫るガラパゴス化の兆候?

一方で、自動車産業における電子化・電気化を考えると、まだまだ何とも言えない部分はあるものの、内燃機関がモーターと二次電池、インバータなどの電気系に置き換わり、それに伴って現在は垂直統合型の日本の自動車メーカーが、台湾と米国の水平分業の連合による企業グループによって淘汰される可能性について言及されている。
(第8章 日本製造業の雄・自動車産業の死角―迫りくる低価格化・水平分業化の波)

これについては、当方も同じ考えで、大変危惧せざるを得ないと思っている。

実際に、著者の宮崎氏が挙げているリスク・ファクターおよび当方の知る事実として、以下がある:

  • 半導体産業で起こった水平分業が最初は誰にも相手にされなかったが、やがてTSMCとアメリカのファブレス企業によって現実のものとなったこと
  • 現実に、台湾のEMS大手であるホンハイ(詳細は本書にてご確認されたし)が今後の事業戦略の一分野として自動車を挙げていること
  • 低価格な自動車に関しては、台湾のEMS/ODMだけではなく、インドの新興自動車メーカー、タタ・モーターズ(Tata Motors)が、実際に30万円カー(現地価格で10万ルピー)の「ナノ(Nano)」を発表していること

現時点では、原材料となる鉄鋼の市況が高騰したため、30万円は非現実的だという指摘が日本の自動車産業では一般的なようだ。

しかし、日本の自動車メーカーの経営者らがその非現実性の前提としていること、例えば材料の鉄鋼が別の安価かつ強度も十分な素材で置き換えられた場合には、30万円という価格は現実のものとなる可能性はある。

また、現在はすり合わせが必須となっている自動車の設計が、パソコンや携帯電話のように標準プラットフォーム・ベースになれば、多少の技術とスキルさえあれば、誰でもプラモデルを作るように自動車を組み立てることが可能にならないと絶対に言い切れるだろうか?

例えば、Google が携帯電話のプラットフォーム Android を開発し、オープンなプラットフォームとして一般に開放したようなことが、自動車産業では絶対に起こりえないと100%言えるだろうか?
(Google なら、自動車が電動化した際に、そのOSを開発して、オープン化位のことはやりかねないと思う。)


要するに、現在はまだまだ非現実と思われる自動車産業のガラパゴス化も、そういう可能性は無いとは言えないという前提で、市場動向を見つつ事業を進めなければならないと当方は考える。
 
ということで、電子産業、半導体業界、精密機器業界、自動車業界などで、日本の製造業の行く末に疑問や不安を持っている方、特に経営に関与される方には、是非「ガラパゴス化する日本の製造業」のご一読をお奨めしたい。

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