Better Place のバッテリー交換式EVは普及するか
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Better Place のバッテリー交換式EVは普及するか


今週火曜日(4/26)に米ベタープレイス社の電池交換技術を採用した電気自動車(EV)のタクシーが営業を開始した。タクシーの運行は日本交通で、経済産業省資源エネルギー庁の実証試験であるため、この7月までで期間限定の営業運行となる。

メディアではこの実証試験という部分の詳細があまり報じられていないが、要するに国がお金を出している、つまり税金を使った社会実験ということだ。公開情報から、ベタープレイスのバッテリー交換ステーションは約5000万円だというので、それに加えて3台の電池交換式EVの改造費用や大容量リチウムイオン電池のコストなどを加えると、大雑把に見積もって少なくとも1億円程度のプロジェクトだと考えられる。

このベタープレイスの電池交換技術、自動車メーカーで対応を公式に表明しているのは今のところフランスのルノーだけである(ルノー日産アライアンスで、とよく言われるが日産自動車はどちらかと言えば消極的)。それ以外は国内外の先進国では大手の自動車メーカーで対応を行うという企業がまだない。その理由は、現在のリチウムイオン電池にまだ改善の余地が多く、電気自動車では電池の優劣が競合優位に直結していること、またそのような競争力の源泉となるキーコンポーネントを交換してクルマを走らせるなどということは常識的に考えられないからだ。(従来のガソリン車で言えば、エンジンを交換するにも等しい。)

しかし、今年の北京国際モーターショーではベタープレイスはいよいよ奥の手として中国自動車メーカー(奇瑞汽車)との提携を打ち出してきた。こういうシナリオは十分ありえると思ってはいたのだが、ついに来たか、という感じである。

当方としては、ルノー以外にトヨタやホンダ、フォルクスワーゲンやダイムラーが当初ベタープレイスに対応しなくても、中国やインドなどの新興国の自動車メーカー、あるいはカナダのマグナ・インターナショナルといった自動車業界のEMS(製造受託専門のメーカー)がベタープレイスの電池交換式EV製造を引き受けるのではと思っていたので、もちろんそれほど驚くべきことだとは考えていない。

以上がベタープレイスを取り巻く状況なのだが、では実証試験の3ヶ月が終わったあと、ベタープレイスの電池交換ステーションはどうなるのだろうか。

ちなみに、ベタープレイス・ジャパンによれば、東京都内には100箇所ほどの電池交換ステーションがあれば十分という。ということは、都内だけで5000万×100=50億円が電池交換ステーション・インフラの設置に必要になる。

もちろん、これに交換用のリチウムイオン電池パックのコストを加算する必要がある。仮に、一個の電池パックを100万円として、一箇所のステーションに10個備蓄するとしたら、100万×10×100=10億円がバッテリー代に必要になる。実際には他にも電力インフラやら太陽発電パネルやらを入れると結局、東京都内での電池交換インフラ全体で最低でも100億円規模にはなるのではないか。

翻って、三菱のi-MiEVや日産のリーフといった電池固定のEVの充電インフラ費用を考えてみる。
EVの所有者は夜間などに200Vの普通充電を使うので、外で電気残量が不足したときに応急処置的に使うのが急速充電器の役割(ベタープレイスの電池交換ステーションに相当)になる。急速充電器は価格が350万円位、設置工事費は一概に言えないのだが、高圧契約の施設への設置で比較的簡単に設置できる前提で150面円程度としよう。すると、合計500万円。ということは、仮に50億円あればだいたい1000基の急速充電器が設置できることになる。予算が100億円なら2000基設置可能だ。

と、ここまで見ると100箇所の電池交換ステーションと1000基または2000基の急速充電器というのは、それぞれほぼ実用的にEVを使える環境を実現出来るように思う。ただ、電気の補給にかかる時間から見ると、カラの状態からだと8割の充電に30分かかる急速充電よりも1分足らずで完了する電池交換がやはり有利だ。

あとはリチウムイオン電池のコストなども絡んでくるし、電池の標準化という課題もある。
また、ベタープレイスが中国の自動車メーカーと提携したとなると、日本より先に中国に電池交換ステーションが大量に設置され、低コストなリン酸鉄系リチウムイオン電池セルをふんだんに使った交換用EVバッテリーパックが大量に製造されるというシナリオもあるかもしれない。

中国得意の人海戦術と日本でチューニングされた電池交換ステーションの技術があれば、安価で高性能な電池交換ステーションをポコポコと中国各地に作るのは簡単なように思う。もちろん、同じようにして電池交換ステーションをイスラエルとデンマークにも作る訳だ。(雇用対策にもなりそうだし。)

ともすれば、キワモノとして異端視されるベタープレイスの電池交換式EVのビジョンだが、もしかするとこれが大化けして本命になる可能性も十分にある(だからこそ、シリコンバレーのベンチャーキャピタルやHSBCのファンドなどがこぞってベタープレイスに大金を投資している)、と当方は思っている。


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