Better Place のバッテリー交換ステーション(BSS)に潜入!
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Better Place のバッテリー交換ステーション(BSS)に潜入!

さる6月10日の晩、Better Place(ベタープレイス・ジャパン)社が開催したバッテリー交換式EVタクシーのブロガー向け試乗会に参加した。

ベタープレイス社の動向にはずっと注目しており、昨年5月に横浜で行われたバッテリー交換ステーションの実証試験も見学したし、この4月の終わりのバッテリー交換式EVタクシー実証運用の開始の時にも見ていた。

しかし、バッテリー交換EVタクシーに乗ったことは無かったし、BSSも外側から眺めるだけで内部の機構なども他のメディアが報道した写真や映像でしか見たことが無かったのだ。

今回のブロガー向け試乗会では、それらが体験できるということだったので、同社の事業や技術にはそれなりに精通(食傷?)していた当方も参加させて頂くことにしたのである。


このブロガー向け試乗会はこの実証試験期間中では今回が二度目ということで、既に様々なブログでも記事が公開されているが、当方としての思いや考えを中心に述べてみたい。

電池交換インフラの事業化がさらに前進

まず、昨年の横浜の実証試験の時点からすると事業化の度合いは確実に進んだと言える。

電池交換ステーションは、東京R&D社がチューンナップを施したお陰で電池交換の時間が短縮され、以前は1分半程度は掛かっていた電池交換時間が約1分までに改善されている。これは、通常のタクシーの燃料であるLPGの補給よりも早いレベル。

交換用のバッテリーパックも3台のEVタクシー運用のために1台当り4個で合計12個が用意され、日々のオペレーションで使用されている。バッテリーパックの中身はA123システムズ社製のリチウムイオン電池セルや制御回路が入っている。

このバッテリー交換ステーションの内部は、さながら自動化された工場のように見えるがそれもそのはずで、実際に工場の自動搬送機器などの技術を転用しているそうだ。その部品もほとんどが既製の量産品で低コスト化したということである。バッテリーパックもほとんどが既製品の部品で構成されており、「特注品は写真で赤く見えるコネクタ部分くらい」(同社事業本部長の三村氏)だそうだ。

電池交換型のEVも「T」ナンバーの着いた日産「デュアリス」が1台だけだったのがタクシー用に緑ナンバーを取得した3台の追加で合計4台になった。電池交換式EVへのコンバージョンのためにこれまでに蓄積されたノウハウや部品の低コスト化などを考えると当面、電池交換式EVはデュアリスをベースに増殖する可能性が高い。


他のブロガーの方々は、このバッテリー交換ステーションを見て「サンダーバード」のようだとか、近未来だとか、まぁ色々と書かれているわけだが、重要な点はこの仕組みには何か革新的な真新しい技術が使われている訳ではないことだ。

つまり、前にもこのブログで指摘した通りだが、ベタープレイスの電池交換メカニズムはすべて既存技術の組み合わせだけである。だから、少なくとも技術的には失敗のリスクが非常に少ないのである。だからこそ、欧米のベンチャーキャピタルや銀行など機関投資家のシンジケートがベンチャー企業である同社に多額の出資を行っているのだろう。(もちろん、技術的なリスクだけでなく、事業的なリスクも十分に少ないと判断したからだろう。)

パフォーマンスとして最も目立つ電池交換メカニズムだけではなく、IT系のシステムも着々と開発が進んでいる。


今回の実証試験では、各EVタクシーの所在地、バッテリー電力量の残量、などがリアルタイムに把握できるようになっている。

また、運転手はすべてiPhoneを持っていて、必要な情報の確認なども行えるそうだ。
収集したEVタクシーのデータは、例えばiPadでも即座に集計したり解析したりできる。
この辺の情報通信システムも実は同社のコア技術であり、電池交換と同じくらいに重要なものだろう。

事業面でも重要なマイルストーンを通過

今回のEVタクシー運用による実証試験は、テレビや新聞など国内外メディアの注目も多く集めたので、相当数の人がこのEVタクシーのことを知る事になったと思う。国内の関係者はもとより、海外からも多くの視察団が訪れているとのことで、欧米の自治体、電力会社、自動車メーカーの首脳などがこの電池交換式EVタクシーに試乗し、BSSの仕組みを見学したそうだ。

その結果、ニューヨーク、オーストラリア、中国などでも、東京と同じBSSが導入される可能性も出てきた。例えば、ニューヨークの場合「市長に『9月までにこれと同じものを建ててくれ」と依頼されたのでニューヨークでも実証試験として実施する」(同社社長の藤井清孝氏)という。

中国に関しても、奇瑞汽車(Chery Automobile)社が電池交換式EVの共同開発をベタープレイスと行うことが北京モーターショーで明らかにされた。これも同社のグローバルな事業戦略上、非常に大きな前進だ。

何しろ、日本や米国を抜き去って世界一の自動車市場となった中国である。もし、万が一、日本で電池交換式EVインフラの事業が成功しなかったとしても、中国(と北米)で成功すれば、それだけで横浜と東京で実証試験を行った価値があるのではないだろうか。当方がもしシャイ・アガシCEOだったら、そう考える。


日本でも実証試験後の継続的な事業展開に期待

もちろん、ベタープレイス・ジャパンの方々はこの実証試験だけで終りとなることを望んでいる訳ではない。ということで、7月に経済産業省資源エネルギー庁の補助金による実証試験が完了した後にも西新橋のバッテリー交換ステーションをそのまま事業拠点として継続運用する方策を探っているということである。

問題は、やはり資金だろう。

このバッテリー交換ステーション、今回のものは約8,000万円掛かったと聞いた。
もちろん、これをいくつも作れば、これまでに聞いたように一箇所当り5千万円、いやさらに安くできるだろうし、中国で部品やモジュールを製造して日本に輸入するという手もあるだろう。この場合、中長期的には3千万とか2千万円位にまでコストダウンができるかもしれない。

それでも、まだ高価なリチウムイオン電池によるバッテリーパックを潤沢に手にいれることも必要であり、とにかくインフラ事業ということで多額の資金が必要になることだけは確かだ。その資金を誰がリスクマネーとして負担できるのか。

日本国内でもしベタープレイスと協業の可能性があるとしたら・・・三菱重工だろうか?
三菱重工なら、三菱グループの中核企業としておカネもあるし、リチウムイオン電池も開発、製造するし、EVバスなどで電池交換式を採用したいという意向も示していて、ベタープレイスから見ても願ったり叶ったりということになりそうだ。

EVバスだけでなく一般向けの乗用車EVでも、もしかしたら三菱重工が三菱グループとして経営再建を支援中の三菱自動車を協力させるなんてウルトラCが飛び出すかもしれない。

三菱自動車だってすべて自社開発のパワートレインとEVだけで勝負したいだろう。だが、台所事情の苦しい三菱自動車としても背に腹は代えられない訳で、ベタープレイスのバックにいるユダヤ系金融と三菱グループの両方で財政支援をするからベタープレイス規格に基づいた電池交換式EVを大量生産しろなんていうシナリオも十分にありえるのではないか。

特に、仏プジョーシトロエンとの業務提携がご破算となった現在、このようなウルトラCが飛び出す可能性は高まったと思う。

なにしろ、100年に一度の構造的な変化が自動車業界では進行中だ。

ビッグスリーの2社が破産して米政府の管理下で再建中となり、スズキがフォルクスワーゲンと提携したと思ったら、トヨタ自動車がテスラに資本参加しEVで協業するなんて話がポンポン出てくる昨今、基本的には何が起きてもおかしくない。

おカネはかなりあるが提携自動車メーカーがなかなか増えないベタープレイスと、クルマの製造は得意で生産キャパシティを十分に持っているが、おカネが無くて困っているMMCが組むというシナリオは、Win-Winになる。


単なるベイパーウェアか、それとも破壊的イノベーションの旗手か

このバッテリー交換ステーションについては、海外メディアにも報道されているということで、検索から New York Times の記事を読んでみると、やや皮肉っぽく vaporware(構想だけで実現しない製品)等といった表現も見られる。

しかし、上述の通り技術的には既存のものを組み合わせているだけであり、あとは資金と自治体や企業などの賛同者、それに世論が味方をすれば成功の可能性はかなりあると思うのだ。
そして、成功するとしたら、これは電池固定式のEVと共に現在の自動車産業のサプライチェーンやモビリティ(移動手段)のあり方に大きな変革をもたらす破壊的イノベーションになるのではないかと感じている。

お土産のエネループをもらったからヨイショする訳では決してないが(w)、大気汚染や地球温暖化の対策としてEVは必要不可欠で待ったなしであること、実用性を犠牲にせずにEVを普及させるには電池交換式に大きな利点があること、懸案だったパートナー企業の獲得も徐々にではあるが進展していることを考えると、いよいよ同社のビジネスモデルの真価が発揮される時期が近づいている予感もする。

来年のイスラエルとデンマークでの事業展開、さらに米国や中国などでの実証試験、そして日本国内での次のステップ、と今後も引き続き注目していきたい。

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